研究内容
膜タンパク質の細胞内局在機構の解明
タンパク質は細胞内における局在位置が規定されており、それぞれが最終目的地まで正しい経路を通って輸送されなければなりません。生命情報科学研究室では、細胞内局在予測が特に難しい膜貫通タンパク質に特化し、膜貫通領域のアミノ酸配列を用いたバイオインフォマティクス解析から、細胞内局在化のルール抽出や予測法の開発を行っています。また、バイオインフォマティクスで明らかにした局在化ルールや予測法の精度を実験的に検証するために、膜貫通領域のアミノ酸配列を蛍光タンパク質に導入してヒト培養細胞に発現させ、蛍光顕微鏡で細胞内局在性の確認を行っています。
機能性ペプチドの分子機構
タンパク質は酵素の働きにより、さまざまなペプチドに分解されます。それらのペプチドが種々の受容体タンパク質に結合し、血圧降下・脂質代謝・炎症修復などの生理活性を引き起こすことが知られています。生命情報科学研究室では、バイオインフォマティクスの手法により、現在ゲノム配列が明らかにされている全生物種のタンパク質の中から、これらの生理活性ペプチドを見出しています。また、これらのペプチドのヒト培養細胞内での発現や、ヒト培養細胞への直接作用を行う分子生物学実験により、血圧降下・脂質代謝・炎症修復などの生理活性の分子メカニズムの解明を目指しています。
細胞死・細胞分化誘導タンパク質の発見
チョウやクラゲは、変態動物として知られています。変態が起こる際、生体内では大規模なアポトーシス・細胞分化が起こっています。生命情報科学研究室では、チョウやクラゲの体液に含まれるタンパク質成分の中から、アポトーシスや細胞分化を誘導する因子を網羅的に発見する試みに挑戦しています。生命情報科学研究室では二次元電気泳動で分離したタンパク質から網羅的にアポトーシス・細胞分化誘導タンパク質を発見するシステムを開発しました。このシステムを用いて、ヒトがん細胞のアポトーシスや細胞分化を誘導する因子を網羅的に発見します。
ベニクラゲの生態学的・生理学的研究
生命情報科学研究室では、若返りをする不老不死生物であるベニクラゲから、機能性タンパク質を発見する研究を行っています。その際には、若返りの段階にあるベニクラゲ試料を必要とします。しかし、若返りの人工誘導は大変困難であり、これまでは私達の共同研究先である京都大学瀬戸臨海実験所の久保田信先生しか成功していませんでした。そこで生命情報科学研究室では、久保田信先生とともに、ニホンベニクラゲの成熟個体やポリプ幼体をさまざまな条件で飼育し、若返り誘導に必要な要因を探し出すことに成功しました。この成果で、若返り段階のベニクラゲが安定的に入手できます。ベニクラゲの若返り分子機構を詳細に解明すれば、私達もいつかは若返ることができるかもしれません!?